ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

数字のマジック

数字と言うものは不思議な力を持っている。約半数と言うよりも「52.7%がこう思っている」と具体的な数字を用いた方が説得力を増す。視聴率20.1%と19.9%とでは雲泥の差があるように見えるが、標本数が600で世帯視聴率が20%の場合、標本誤差は±3.3%(ビデオリサーチ社のホームページから)。つまり16.7%〜23.3%の間に標本数の95%が入っていると言うことでしかなく、要は小数点以下一桁まで出してもあまり大きな意味は無いのだ。

内閣支持率も各マスコミが独自調査で発表しているが、各社の発表数字には大きな差が見られる。各社の数字は誤差を考慮すると似通ったものなので参考にはなる。ただ、小数点以下一桁まで出す必要があるのかどうかは、視聴率同様、疑問である。

この「数字への誤解」を積極的に活用する方法もある。

貧困化が進んでいる事を強調するために、物価変動を加味した「実質賃金が下がっている」という使い方もできるし、逆に景気が回復基調にあることをアピールするために「求人倍率は上がっている」と言う事もできる。

またアンケート結果を示す時に、8%の人が「すごく良い」と答えたと書くのと「どちらかと言えば良いと思う」という数字を合わせて半数以上の人が良いと答えたと書くのでは相手の印象は全く変わってくる。通常のアンケートでは「どちらでもない、普通」という答えが多くなると思うが、それを逆手にとって「この商品を良くないと答えた人は8%しかいませんでした」と言うことも出来る。

データというものは一見すると客観的なもののように思えるが、特に企画書のように目的を持って作られた資料に使われるデータは、その目的を達成するために「主観的に選ばれた数字」であることを忘れてはならない。データを改ざんする事は許されなくても、都合の良い数字を持ってくるのは決してルール違反ではないからだ。

企画を立てる時には、メリット・デメリット関係なくあらゆるデータを参考にして立案し、多面的に検証しないといけないが、企画書として提案する際には企画趣旨にあったデータだけ使えば良い。ただし、あまりに常識を逸脱したデータばかり使っていると、必ず質問や反論が出るだろうし、場合によっては企画書そのものの信憑性が失われてくる。

閑話休題

その昔、200万通を超える大型DMセールで、25%以上の購入率を上げたことがある。一般的にDMセールの効果は3%前後と言われているので、私たちは大成功だと思っていた。だが、クライアントの担当者からは「これだけ予算を使ったのに75%の人が買ってないじゃないか」と叱責された。数字というものは本当に怖い。