ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

企画書は紙芝居だ

プランナーとして独立するキッカケを与えてくれた大手広告代理店の支社長に「企画書の究極のカタチは紙芝居だ」と教えて頂いたことがある。1頁にあまり多くの情報を詰め込み過ぎれば、それだけで読む気をなくすと言われた。言われてみれば確かにそうだ。

ひと頃、企画書には出来るだけ多くの情報を入れた方が良いと思っていたことがあった。1ページの中にグラフや表だけでなく、写真・イラストなど様々な情報を詰め込んだこともある。情報量が多いと、それだけで「自分はしっかり仕事をしている」ような錯覚に陥ってしまい、変な充実感を覚えたこともある。

企画書は、伝えることではなく相手に伝わることが重要なのだ。忙しい相手に数分で提案しなければいけないような場合などは1枚にまとめた方が相手も喜ぶだろうが、びっしりと小さな文字であまりに多くの情報が載っている企画書など、読んでくれる訳がない。

広告や販促提案をはじめ、経営方針や株主総会用の資料からクライアントの社内用の企画書まで、今までに数千本の企画書を作ってきたが、その経験から言っても断言できる。一番効果があるのは、最初に言われたこれだった。

企画書は紙芝居だ。

広告代理店の仕事をしていると、企画提案する際にプレゼンテーションの時間をもらえることが多い。1時間以上と言うのは希で、大抵は40分くらい。10分は質疑応答の時間をとる必要があるため、プレゼン時間は20~30分になる。先方の集中力が持つのも、だいたい20~30分が限度だ。

この限られた時間の中でプレゼンして行くには、紙芝居形式の企画書がもっとも効果的だった。言いたいことは1枚にひとつだけ簡潔にまとめる、そして見ていて飽きないようにイラストや写真などをはさんで行く。そう言った細かい工夫を重ねてつくって行くのだが、何より全体のストーリー立てが重要になってくる。

結論を最初に持ってきた方が良いという人もいるが、これは提案する企画の内容と先方の性格を見た上で決めなくてはならない。紙芝居と同じで「桃太郎が鬼を退治しました」というところから始めたのでは盛り上がらないケースもある。結論を先に言おうがあとに言おうが、要は相手に納得してもらえれば良いのだ。

私の場合は、企画書は紙芝居だと思っているので、オーソドックスに市場環境の確認や課題の抽出から入る場合が多い。そして相手がまだ気が付いていないだろうと思えるデータやお客様の声を使ってクライアントの関心を引き、本編の企画内容の紹介に続けて行く。

企画書1頁に入れる内容は、1分前後で説明できる程度に抑えておく。必然的に1頁当たりの情報量は少なくなるが、読み手の心理的負担は軽くなる。そしてポンポンとページをめくって行くように説明することでプレゼンにリズムも出てくる。いつも上手く行く訳ではないが、目指しているのは「へぇ~」→「ほぉ~」→「そう!」。

調子が良い時期は、広告代理店の上位2社を相手にしたコンペで1年以上勝ち続けたこともあるが、決して企画内容が他社を上回っていた訳ではなく、単にわかりやすい企画書が作れたためだと思っている。

時には最新の理論や数式が必要な場合もあるが、企画書は論文ではない。じっくり読まないと理解できないようなものより、相手の心にスッと入るような企画書こそが重要だと考えている。勝負は20分で決まる。その短い時間の中で、いくつの「へぇ~」と「ほぉ~」を引き出せるか。そして「そう!」と言ってもらえるか。いつもそんなことを考えながら企画書を書いている。