ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

100通り考える

テレビでベテランの板前にインタビューしていた。大将曰く「玉子料理でも魚料理でも、ひとつの食材で100の料理を作れなくては一人前とは言えないですよ」

放送作家教室に通っていた頃、同じことを言われた。同じシチュエーションで100個のコントを考えなさい、と。実際に100のコントを作ろうと頑張ってみたが、最初の20~30個までは何とか作れる。最初のアイデアをひねくり回して70個までは絞り出せる。もちろん面白くないのも含めてのアイデアだが、一番苦労するのは最後の10個だ。

若い頃は、そう言った頭の訓練を繰り返していた。それが役に立っているのかどうか分からないが、当時の事を思い出すと、簡単には「他にアイデアはありません」と言えなくなった。

どうしてそんな昔の事を思い出したかと言うと、我らがカープの誇りである男気・黒田投手のインタビューを聞いていたとき、彼が若い頃、キャンプで必ず1回は300球以上投げる日を作っていたという話を聞いたからだ。投手の肩は消耗品だから、あまり球数を投げさせてはいけないと言われている中、黒田投手は、「あれだけ苦しい経験を積んだから」という自信が積み重なって今の自分があると断言していた。

中年を過ぎた頃になると、仕事仲間が、若い頃にどれだけ修羅場を潜ってきたか、自然にわかるようになる。

仕事上での苦労を経験してきた人は信頼できるが、楽に人生を過ごしてきた人は、まず信用できない。イザと言うときに逃げ出したり責任転嫁をすることが多いからだ。それで何度も痛い目にも合ってきた。

今の若い人に100個アイデアを考えろ!と言っても、それがどんな意味があるのか、なぜそんな無駄なことをしなければいけないのか、理由を説明しないとやらないだろう。理不尽な上司と言うレッテルを貼られて煙たがられるのがオチだ。ただ何度も修羅場を潜ってきた人間から言わせて貰うと、一見無茶に見える指示でも、その人を育てるための理由があることが多い。

根性論は私も嫌いだが、絶対にその仕事を放り出さないと言う覚悟と胆力を身に付けるのは、身体に多少の無理がきく若い時しかない。