ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

プロの素人

プランナーという職業は、デザイナーやコピーライターにスポットライトが当たるようになったずっと後に誕生した。それまでにも企画という作業はあったのだろうが、マーケティングという科学的な手法がアメリカから入ってきて、専門家とクライアントの橋渡しが必要になった頃からプランナーという独立した職種が生まれてきた。良いものを作れば売れるという川上発想の時代が過ぎ、消費者が求めているものを探り出すという川下発想が定着するようになって、より消費者に近い企画が必要とされるようになったのだ。
商品やサービスに関してはクライアントの方がよく知っている(当たり前だが)。では何故お金を払ってまで広告代理店のような外部の人間にプロモーションを依頼するのか。それは、売り手側には見えていない買い手側=消費者視点でものを考えられるからだと考えている。プランナーは、いわば『プロの素人』でなければならない。マーケティングの手法がどんどん進化し、パワーポイントやMacの登場でプレゼンのやり方もずいぶん変わってきた。企画書の作成やプレゼンも様変わりし、コピーライターやデザイナーが片手間にやるものではなくなってきた事からプランナーという新しい専門職が必要になったのだ。
少し前まではデータを収集するだけでも膨大な作業と費用が必要だった。各市町村の統計書は役場まで足を運ばないと入手できなかったし、アンケート調査をする際も1サンプル数千円というコストがかかっていた。それが今では大半の情報はネットから入手できる。企画書の作成もプレゼンも、わざわざ専門職に頼まなくてもパワポKeynoteを使えばチョチョチョいと作れるようになった。だから今は、特別なノウハウを持っているコンサルタントを除いて、広告代理店でもプランナーという職種はほとんど見なくなっている。Macの登場で版下屋と言う業種が無くなったのと同じように、ネットの普及によってプランナーという職種は無くなってしまうだろう。ただ、プランニングやコミュニケーション能力が要らなくなったわけではない。プロの素人としての消費者目線は、これからのビジネスでも絶対に必要なスキルになってくる。
ランチェスター戦略やPDCAサイクルといった考え方は既にビジネスマンの常識になっているが、これからも続々と生まれてくるビジネス理論もチェックしておく必要がある。少なくとも日経新聞の見出しに出てくるような専門用語くらいは知っておくべきだ。ビジネスマンとしての常識と自分の仕事に関する知識を身につけるのは当然のことだが、必ずどこかで一度立ち止まって、消費者目線で自社の売物を見るクセをつけて欲しい。それこそがプランニング能力のアップにつながるポイントなのだ。
SONYウォークマンも、社長の「どこでも良い音で音楽が楽しめる小さなプレイヤーが欲しい」と言う鶴の一声から開発が始まった。それまでの技術では作れないと思われていた消費者目線でモノを考えた結果が、色々なヒット商品につながっている。「何が出来るか」ではなく「何が欲しいか」がわからなくなってきた事から日本の不況が始まっている。
これからのビジネスマンには、プランナーとしての知識とセンスが要求される。そう言う時代になったのだ。