ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

タレントの起用

地方都市にいると広告展開に有名なタレントを使う機会など滅多にない。ほとんどは、クライアントの社長さんが知り合いだとかローカル用の低予算に応じてくれる場合に限られる。

飲料メーカーや車など、数多くの販売店を持つ会社が積極的にタレントを使うのは、認知アップと同時にグッズプレゼントなどと絡ませて商品購入や店舗への集客が期待できるからだ。

また、ビールや水着メーカーなどはタレントとは別個にキャンペーンガールを起用する事もあるが、彼女たちの仕事の多くは、地方の販売店回りであることが多い。ポスターに載っている綺麗なお姉ちゃんがお店に来てくれたり一緒にお酒を飲んでくれたら、販売店の社長の士気も上がる。

 

有名タレントの力は極めて大きい。知人である東京のクリエイティブディレクターが、あるキャンペーンにジャニーズのタレントを起用したところ、予想以上の反響に驚いたとも言っていた。

誰を起用するかで商品や会社のイメージも決まってしまうし、売上に直結することも多々ある。ローカルプランナーとしては、なかなか有名タレントを提案する機会がないが、私は、東京に本社がある有名企業のCMに誰が起用されているかで、企画意図を推理するようにしている。

例えば、ノド飴のCMには、天童よしみとか瀬川瑛子などの演歌歌手が選ばれることが多い。このことから、やっぱり飴ちゃんのターゲットは演歌好きなおばちゃんなんだろうなと言うことがわかる。また、自動車はターゲットが明確だ。家族向けなのか女性向けなのか、それとも富裕層を狙うのか。車種を見なくてもCMを見れば大体想像がつく。

タレントを起用するためには、出演料の他に契約金が必要になる。かなり高額になるが、一定期間、競合他社のCMはもちろん、プライベートでの他社商品の使用さえ制限されるのだから、その保証料もコミという事で事務所的には強気に出られる。

たたし、一番のリスクはタレントのスキャンダルだ。クスリとか暴力事件、自動車事故のような犯罪はもちろん、恋愛や私生活での事も大きなスキャンダルになる事がある。文春砲が元気になって、ますますタレント起用のリスクは増えて来た。お笑いタレントのCMが人気の割に少ないのもリスクを考えてのこと。CMは人気を示すバロメーターと言われる事もあるが、実際は「人気と信用のバロメーター」である。人気があるのにCMに起用されないなぁと言うタレントは、本人だけでなく事務所や家族に問題があることが多い。もちろん、タレントのポリシーとしてCMに出ないと言う人もいることを断っておく。

かつてのCM女王だったベッキーは、ゲス不倫と言うたったひとつのスキャンダルでCM界から姿を消した。事務所はもちろん、広告代理店は事後処理が大変だったと思う。彼女のポジションを埋めたのが、高畑充希と松岡美優で、大手スポンサーが数多く起用している=信頼されているタレントは、綾瀬はるかと石原ひとみ、西島秀俊阿部寛ではないかと私は勝手に思っている。

このように、CMや広告展開を見て「何故このタレントを起用したのか? 何故このようなビジュアルにしたのか? 何故この媒体を使ったのか?」などと言った企画意図を想像するだけでも、企画力を鍛えるトレーニングになるのではないだろうか。