ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

嘘をつかない騙し方

「騙し方」というと物騒な話になるが、仕事の上での商談や企画書、プレゼンテーションなどで相手を説得する際には、「嘘にならない騙し方」のテクニックを使うことが多い。嘘をつくのはルール違反だが、相手が納得するような見せ方をすることはビジネスでは良くあることだ。

よく使われるのは、アンケートとお客様の声だ。

アンケートの使い方にも2種類ある。まず、質問内容を恣意的に変えることだ。例えば「アベノミクスで強い経済を取り戻そうとしている安倍政権を支持しますか?」という質問と「憲法を変えて戦争が出来る国を目指している安倍政権を支持しますか?」という質問では、答えは大きく変わってくる。大マスコミがこれほどひどい質問はさすがにしないだろうと信じたいが、コレに近いことは結構行われている。お金が関わってくるビジネスの世界では『最初に結論ありき』な質問を設定することが少なくない。

もうひとつは、アンケートで出てきた数字の中で都合の良いものだけを強調して使うことだ。アンケートの結果、売り出したい商品やサービスを使ってみたいという回答が25%だったとき「わずか25%しかありませんでした」と言うのと「4人に1人がぜひ使ってみたい」と言っていたと説明するのとでは、相手に伝える印象は大きく変わってくる。新聞やテレビを見ているとかなり酷い使い方をしている場合があるので、今度、注意して見つけて欲しい。

アンケート調査で良い結果(相手を説得できるだけの数字)が出なかったときのやり方は、好意的な見方をしてくれるお客様の声を中心に紹介して行く手法もある。ニュース番組などでよくやっている「街頭インタビュー」などがそうだ。数人の声を紹介して、それが同じような意見を語ったら、見ている方はそれが世論だと勘違いしてしまう。アベノミクスを伝えるニュースで「景気が良くなったという実感はないですね」という声が数多く紹介されているが、客観的な数字はどこにも紹介されていない。

一見、客観的に見える「数字」や「ナマの声」ほどアテにならないものはない。マスコミなどの報道に接するときや、商談とかプレゼンテーションを受ける際には、そのことを十分に気をつけて見ていった方が良い。絶対に嘘はついていない。ただ説明の仕方を変えるだけで、相手に与える印象を180度変えることだってできるのだ。
騙し方というと大袈裟になるが、情報を伝える際のテクニックのひとつとして考えれば、使い方によって大きなメリットを生むことを覚えておいて欲しい。そしてテレビや新聞を見るときには、自分が騙されていないか、十分な注意が必要だ。