ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

誰の言葉で書くのか?

もう四半世紀以上も前の話を、先日、ふと思い出した。放送作家をやめて帰省し、プランナー兼コピーライターのような仕事をしていた頃のことだ。何の行事か忘れてしまったが、政治家を目指しているという同世代の青年に出会って少し話をしたことがある。(私にも青年時代があったのだ。懐かしい)

彼は後日行う演説の原稿のチェックをしていた。大変ですねと声をかけると、「自分の言葉で話さないと聴衆に伝わりませんからね」と微笑みながら答えた。彼が誰だったのかは覚えていないが、その時に私は「放送作家、コピーライター、プランナーと随分沢山の文章を書いてきたが、全て誰か(タレントさんや商品、クライアントなど)の代弁であって、自分の考えを自分の言葉で書いたことはないな」と思ったものだ。

放送作家の時は、デビューして間もないタレントさんの番組を担当することが多かったため、番組内で話す言葉を一言一句書くことが多かった。その人の喋り口調を頭に叩き込みながら、アドリブっぽいフレーズや「あ、間違えちゃった」と言う言葉までも台本に書いたものだ。

自分の考えを自分の言葉で書く。一見、当たり前のように見えるが、放送や広告の世界でモノを書く時にはなかなか許されるものではない。自分の意見を言いたければ、政治家や評論家になれば良い。商業ライターは、売れるか売れないか、が勝負である。

 

あの時の政治家見習い、今はどうなっているのだろう。年齢や選挙区から言うと岸田政務会長あたなんだけど、もしそうなら彼は相当頑張ったんだと思う。