ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

東京一極集中の弊害

ひと頃、大手企業の中には、各エリアの販売会社や支社が販促展開を担当し、テレビCMまでエリア単位で制作していたところが何社かあった。

各エリアで起用しているタレントが違ったり、今から見れば、何と贅沢で効率の悪い販促だなぁと思う人もいるかもしれないが、エリアによって客層も競合関係も大きく違っているケースも多く、異なる状況に対応するためにはベストに近い販促手法だったと思っている。ただし、それなりの費用と人材が必要になってくるが。

各エリアの広告代理店~と言っても大手代理店の支社が中心だが~のスタッフたちは、東京には負けないようなプランや広告を作ろうと頑張っていたし、大きな仕事に取り組むことでノウハウを身に付けることも出来た。エリア単位での販促が、地方の広告業界にとっては人材の活性化に一役かっていたことは間違いない。

あれから数十年。ほとんどの広告を東京で作るようになった今、ローカルの代理店は専任チームを解散し、フリーのクリエイターたちも東京へ移ったりプロダクションに入ったりして姿を消した。

東京一極集中の弊害がアレコレ言われているが、タレントの集中も、地方にとっては大きな痛手になっている。各地にローカルタレントも居るには居るが、全国で名前が通っているタレントの前では全く歯が立たない。

大手代理店の本社に行った時、あちこちで有名タレントの名前が飛び交っていた状況を見て、改めて東京とローカルの差を痛感した。私も東京にいた頃は、オリコン片手に芸能事務所に片っ端から電話をして歌手の近況を聞いて原稿を書いていたから、昔を思い出せば、放送局や広告会社でタレントの名前が飛び交うことは当たり前の光景だったはずなのに、妙に眩しく見えた。

東京とローカルの一番大きな違いは、いわゆる「芸能界」との距離感の差なのかもしれない。ローカルで東京のタレントを起用する機会など滅多にない。ローカルで有名タレントを起用しにくいのは、予算的に合わないことが最大の要因だが、芸能事務所との力関係も大きく左右する。

実際、地元に本社がある広告代理店の名前で芸能事務所に電話をしても、ほとんどの相手にしてもらえない。大手代理店なら相手にはしてもらえるが、支社や地域会社の仕事だと分かると、先方の声のトーンが急に下がることもある。

ローカルタレントと言っても、最近は北海道を拠点にしている大泉洋や秋田の柳葉敏郎などもいる。全国区でありながらローカルでも頑張っている人が増えないと、地方のパワーは強くならない。