ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

フリマアプリ再び

牛(買うガール)とオオカミ(売るふ)が登場するフリマアプリのCMが新しくなった。女の子がお店で気に入った靴を試着した後、買わないまま店を出る。彼氏らしき男性が「買わないの?」と聞いたところで、「買うよ!」とフリマアプリを立ち上げるという内容になっている。

牛とオオカミが登場する段階で違和感を感じていたのだが、新CMでの女性の行動は、お店の人から見たら最悪だ。まぁ、ショールーミングという行為そのものは前からあったし責められるものではないが、「それを推奨するようなCMはどうなんだろう」とますます強い違和感を感じた。これもまた「若い人はそんなに深く考えないですよ」と言うひと言で済むことなんだろうか? CMを放送する前に必ずチェックすると思うのだが、クライアントは何も思わなかったのだろうか。それとも、これが時代の流れなんだろうか。

フリマアプリとは全く関係ない話なのだが、ネットショッピングが今のように一般的になる前、大手量販店のショッピングサイトの告知に関わったことがある。ネット担当者は、「店舗の品揃えは無限だ!」、「リアル店舗よりも経費が抑えられるので安く販売できる!」と息巻いていたが、ネットの充実に相反して、なかなか利用者が増えていかなかった。全国に広がる店舗に、本部から「もっと積極的に告知するよう」に指示が出たのだが、実際にお店に行っても作ったはずのポスターやチラシが見えにくいところにそっと掲げられているだけで、店員による声かけも行われていなかった。ネット担当は店舗の怠慢だと言っていたが、実際にリアル店舗の店長に話を聞いたところ、「自分の店の売り上げをネットに横取りされるだけ。そんな馬鹿なことはしたくない」ということだった。

各店舗の売上実績を問われる店長としては、ネットを使えば企業全体の売上が増えることがわかっていても、自店の売上がネットに奪われたのでは店長やお店の評価に関わってくる。同じ会社とはいえ、ネットは自店のライバルなのだ。そのことを理解しないで告知しようとしても、どうしても無理が生じてくる。

私が関わった流通大手は、とりあえず、ネットでの売上を一番客数と売上が多い本店に組み入れることで、本店顧客への積極的な告知を行いネットでの実績を伸ばしていった。今のようにネット販売が一般的になってからは、ネット店舗として独自の受注発送や売上管理をしているのだと思う。

流通各社でネットショッピングが当たり前になっているが、その手法は各チェーンで大きく異なっていると思う。ネットで注文して近くのコンビニに取りに行くというシステムは、リアル店舗であるコンビニ側にも何らかのメリット(売上)がバックされるはずだ。近くのお店から配達する場合なども同じだと思う。直営店でさえ自店の売上がネットに流れるのを嫌がるのだから、フランチャイズ店だったらなおさらだろう。

ネットとリアル店舗との共存は、消費者から見れば今や当然のことになっているが、その裏では様々な試行錯誤が行われている。すべて顧客視点で考えることは重要だが、ネットショッピングなどのシステムに関しては、顧客だけでなくリアル店舗の声も反映させなければ成功しない。

いつも本部の人とだけ打ち合わせをしていると、店舗が見えなくなることがある。どんなに素晴らしいと思われる施策も、店舗(現場)の協力なくして成功はない。施策を実施した後は、必ず現場の声を聞いて次の企画に反映させて行かないと、その企業とのお付き合いは難しい。

プランナーも、ドラマに出てくる刑事と一緒で「現場百回」が大切だ。