ARGOの「プラトレ」

通る企画書を作るために。プランニングのトレーニング

1票の格差

1票の格差が大きな問題になっている。投票行動が国民が持つ最大の権利である以上、票の重さに違いがあるのはおかしい、という理念はわかる。その一方で、人口が減少する中で東京への一極集中が進んでいることや、地方の弱体化・郡部の過疎化などが問題になっている。1票の格差を是正しようとすればするほど大都会〜特に東京選出議員が増加し、ますます地方の声は届かなくなってしまう。一時期、東京の税金が地方に回されるのは不公平だと発言していた議員がいた。自分たちのお金は自分たちが使う権利があると言いたい気持ちも理解できないでは無いが、1票の格差を完全に解消しようとすれば同じように勘違いする議員が増えてくるかもしれない。

人口が東京に集中するのは、そこに大学や企業が集中しているからだ。企業が東京に集中するのは省庁があるからであり、政治家が集まる国会があるからだ。各省庁の権限が強すぎるから企業の本社が集まり、クライアントの本社が東京に集中しているからマスコミやタレント事務所が集まってくる。日本もそろそろアメリカのワシントンとニューヨークのように政治と経済の中心地を分けたほうが良いのではないだろうか。日本も昔は、政治は江戸・経済は大坂として機能していた。戦後も大阪に本社をおいていた大企業も多かったが、高度成長期の省庁の権力が強くなったために東京集中が強まり、大企業は続々と本社を東京に移すようになった。

ケンミンショーなどを見ると、かろうじてまだ地方色は残っているようだが、お笑いの総本山である吉本でさえ人気芸人は東京に進出している。橋下徹氏の大阪都構想には「都(みやこ)はひとつだろう」と多少違和感を感じていたが、大阪副都とか商都だったら大賛成だ。明治維新直後のように国が一致団結すべき時なら東京への集中する意味はあったかもしれない。しかし、ここまで大きくなった国がひとつの都市に全てを集中するのは危機管理上でも大きな問題がある。

地方都市で制作するCMがあまり面白くないのは(もちろん例外もあるが)、クライアントがいない、予算がない、アイデアを出したりCMを作れる人材がいない、タレントがいない、、、まさに無い無い尽くしだからだ。地方で良いCMを作ろうとすれば、ディレクターは東京から呼ぶことになる。タレントを起用するなら、これも東京から呼ぶしかない。1億人以上が暮らす国で東京にしか人材が集まらないのは、そちらの方が異常だ。

政治の首都は東京でも良いが、そろそろサポート機能を持つ都市を作る時期に来ているのではないだろうか。1票の格差と言うニュースに触れるたびに、都市部への権力の集中化への危惧を覚えると同時に地方を何とかして欲しいと切に思う。