インバウンド需要を横目で見ながら
昨年から外国人~特に中国人観光客の「爆買い」が大きな話題になっている。政府が観光立国と言う方針を掲げていることから、今後も外国人観光客は大きな「需要の塊」であり、特に量販店などの小売業には見過ごすことの出来ない商売のチャンスであることは間違いない。これらのインバウンド需要をどう取り込むか~私なりに色々と勉強して何本かの企画書も作成したが、売れるからと言って爆買い需要にスタンスを移すのは良くないと考えている。商売の基本はあくまでも「お得意様=既存客」であり、顧客の固定化こそが安定した売上につながって行く。『顧客第一』をスローガンにあげる企業や商店は山ほどあるが、実際にお客様目線で商売を行っているところは案外少ない。
中国人観光客による爆買いは一時的には企業に大きな売上をもたらすかもしれないが、その一方で固定客の店離れを生み出す危険性もある。実際、外国人観光客であふれる銀座の老舗に「もうあの店には行かない」という常連客の声を紹介したニュースをよく目にするようになった。目の前にいる新規のお客様を大切にするのは悪いことではないし、観光客お断りと言う看板を掲げることも出来ない。ただ、目先の利益に目を奪われて既存客をないがしろにするといつか痛いしっぺ返しを受ける。
外国人観光客はこれからも増えるだろうが、中国人による爆買いは党の政策次第で一気に収束する危険が高い。来日した時に使用する金額の客単価を調べると、今のところ台湾・香港・中国からの観光客が多くなっているが、これからは、多分タイ人観光客の需要が増えてくる。欧米からの観光客はあまりお金を使わないから、爆買いのような大きな売上にはつながらないだろう。
そんな爆買いブームを見ていると、携帯各社の販促キャンペーンを思い出す。
政府が口を出すのは良くないと言う批判もあるが、官邸のひと声で「携帯電話のゼロ円販売」は無くなった。そのせいで契約件数が下がったと言う声もあるようだ。大半の人が携帯電話を持つようになった今、他キャリアの客を引っ張ってくるのが一番効率が良いのだろう。ただ15年以上ドコモを使ってきた私にとっては、上得意である既存客を無視して新規客ばかりを狙う「MNPゼロ円キャンペーン」を横目で見ながら苦々しく思っていたのも事実だ。(今は利用年数に応じた値引き施策が組み込まれている)
新規客ばかり狙って既存客に冷たい商売はいずれ廃れる。と信じているのだが、携帯各社を見ていると、10年以上も莫大なキャッシュバックやゼロ円キャンペーンが続いてきた。本来の商習慣から見れば、そちらの方がよほど異常だ。
ロジカルトーキング
プロの素人
企画書の5W1H
ゼロからイチは作れない
フリマアプリ再び
牛(買うガール)とオオカミ(売るふ)が登場するフリマアプリのCMが新しくなった。女の子がお店で気に入った靴を試着した後、買わないまま店を出る。彼氏らしき男性が「買わないの?」と聞いたところで、「買うよ!」とフリマアプリを立ち上げるという内容になっている。
牛とオオカミが登場する段階で違和感を感じていたのだが、新CMでの女性の行動は、お店の人から見たら最悪だ。まぁ、ショールーミングという行為そのものは前からあったし責められるものではないが、「それを推奨するようなCMはどうなんだろう」とますます強い違和感を感じた。これもまた「若い人はそんなに深く考えないですよ」と言うひと言で済むことなんだろうか? CMを放送する前に必ずチェックすると思うのだが、クライアントは何も思わなかったのだろうか。それとも、これが時代の流れなんだろうか。
フリマアプリとは全く関係ない話なのだが、ネットショッピングが今のように一般的になる前、大手量販店のショッピングサイトの告知に関わったことがある。ネット担当者は、「店舗の品揃えは無限だ!」、「リアル店舗よりも経費が抑えられるので安く販売できる!」と息巻いていたが、ネットの充実に相反して、なかなか利用者が増えていかなかった。全国に広がる店舗に、本部から「もっと積極的に告知するよう」に指示が出たのだが、実際にお店に行っても作ったはずのポスターやチラシが見えにくいところにそっと掲げられているだけで、店員による声かけも行われていなかった。ネット担当は店舗の怠慢だと言っていたが、実際にリアル店舗の店長に話を聞いたところ、「自分の店の売り上げをネットに横取りされるだけ。そんな馬鹿なことはしたくない」ということだった。
各店舗の売上実績を問われる店長としては、ネットを使えば企業全体の売上が増えることがわかっていても、自店の売上がネットに奪われたのでは店長やお店の評価に関わってくる。同じ会社とはいえ、ネットは自店のライバルなのだ。そのことを理解しないで告知しようとしても、どうしても無理が生じてくる。
私が関わった流通大手は、とりあえず、ネットでの売上を一番客数と売上が多い本店に組み入れることで、本店顧客への積極的な告知を行いネットでの実績を伸ばしていった。今のようにネット販売が一般的になってからは、ネット店舗として独自の受注発送や売上管理をしているのだと思う。
流通各社でネットショッピングが当たり前になっているが、その手法は各チェーンで大きく異なっていると思う。ネットで注文して近くのコンビニに取りに行くというシステムは、リアル店舗であるコンビニ側にも何らかのメリット(売上)がバックされるはずだ。近くのお店から配達する場合なども同じだと思う。直営店でさえ自店の売上がネットに流れるのを嫌がるのだから、フランチャイズ店だったらなおさらだろう。
ネットとリアル店舗との共存は、消費者から見れば今や当然のことになっているが、その裏では様々な試行錯誤が行われている。すべて顧客視点で考えることは重要だが、ネットショッピングなどのシステムに関しては、顧客だけでなくリアル店舗の声も反映させなければ成功しない。
いつも本部の人とだけ打ち合わせをしていると、店舗が見えなくなることがある。どんなに素晴らしいと思われる施策も、店舗(現場)の協力なくして成功はない。施策を実施した後は、必ず現場の声を聞いて次の企画に反映させて行かないと、その企業とのお付き合いは難しい。
プランナーも、ドラマに出てくる刑事と一緒で「現場百回」が大切だ。
フリマアプリ
最近、買い手側が牛(買うガール)になったり売り手が狼(売るフ)になるCMをよく見かける。メルカリとか言う売ったり買ったりするスマホアプリのCMらしく、フリマアプリなんぞと言うジャンル名まで作られているようた。
CMソングはPUFFYが歌っているオリジナルソングらしいが、還暦の私から見ると、売り手が狼、買い手が牛と言う絵面を見ただけで、狼が「どこかに獲物はいないか」と狙っているネットにありがちな詐欺を疑ってしまうのだ。
おそらく、企画した人もクリエイターも、そしてクライアントも若い人たちばかりで、ネット詐欺を思い浮かべる人はいなかったのだろう。もし私がこのCM制作に絡んでいたら、即、その点を指摘する。
ただ、ターゲットも若い人たちだからそんな事は考えないですよと言われたら、そうなのかと引き下がる。ただ、私くらいの年代には大きな不安感を与えるCMである事は間違いない。それが会社にとってマイナスにはならないのかを判断するのは、クライアントの問題だ。
最近のテレビ番組やCMを見ていると、よくこんな企画で通ったなと思うようなものが増えてきた。明らかに間違っているものとか、単に年齢による感覚の違いと言うだけでは済まされないものも増えてきている。
ニュースでも人名や地名などを間違え、後から訂正するシーンもよく見かけるようになった。頑固爺さんの叱言も含まれている事に間違いはないが、チェック体制も緩んできているのではないだろうか。
CMひとつで企業イメージを大きく損なう事だってあり得るのだ。作り手側もクライアントも、もっと真剣にチェックする必要がある。